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国境なきユマニチュードの活動紹介

About the activities of Humanitude Sans Frontières

署名団体 インタビュー

ユマニチュード発祥の地・フランスに広がる「絆のネットワーク」――IGMフランス

IGMフランス アニー・ドゥ・ヴィヴィ―氏

インタビューにご協力いただいたアニー・ドゥ・ヴィヴィー氏
出典:高齢者と介護者向けウェブサイト「agevillage.com」
(https://www.agevillage.com/actualites/edito-ete-regarder-capacites-vieilles-personnes-et-pas-seulement-leurs-pertes)

「国境なきユマニチュード憲章」に署名した団体へのインタビュー第三弾。今回は、「IGMフランス」のマネージングディレクターであるアニー・ドゥ・ヴィヴィー氏(以下、「アニー氏」)にお話を伺いました。

ユマニチュード発祥の地・フランスで普及活動を牽引するIGMフランス。その取り組みの背景や活動への思いについて迫ります。

IGMフランスについて

IGMフランス(Institut Gineste Marescotti France)は、ユマニチュード発祥の地であるフランス国内における普及推進を担う機関です。ユマニチュードの知的財産を保有する「SASユマニチュード」からライセンスを受け、フランス国内での展開や医療・介護施設への導入支援を行っています。

現在、フランス国内には12か所のIGM拠点があり、アニー氏はマネージングディレクターとしてそのすべてを統括しています。さらに、ユマニチュードを導入している施設は約800施設にのぼり、そのうち38施設がユマニチュード認証を取得しているとのことです。

ケアの未来を切り拓く多面的な普及活動

IGMフランスは、年に4〜5回、イベントや研修会などを通じた普及活動を行っています。
その中でも代表的な取り組みが、毎年11月に開催される「非薬物療法カンファレンス(Colloque Approches Non-Médicamenteuses)」です。2008年から続くこのカンファレンスには、多くの施設管理者や医療・介護の専門職が集い、現場に根ざした非薬物ケアの知見や実践例を共有しています。

そこで大切にしていることは、実際にユマニチュードを現場で実践し、認証を取得した施設の管理者に登壇してもらうことです。
認証施設の管理者は、ユマニチュードの価値を最もよく伝えられる「アンバサダー」です。自身の経験に基づく言葉で実践の成果や苦労を語ることで、ユマニチュードの素晴らしさを届けてくれます。


また、アニー氏は2000年に高齢者と介護者向けのウェブサイト「agevillage.com」を創設しました。現在も記事の執筆や情報発信に携わり、メディアを通じた啓発活動にも力を注いでいます。

幼少期の記憶――ケアの現場で育まれた原点と確信

ユマニチュードに惹かれた原点には、幼少期の記憶があります。
介護施設で働く母親の姿を間近で見ながら育ったアニー氏は、「もっと楽に、心地よくケアができたら」という想いを抱いていました。

2003年、あるイベントでイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏に初めて出会います。最初は話を聞くだけのつもりでしたが、「実際の現場を自分の目で確かめたい」と考え、両氏が指導するフランス南部の病院を訪ねました。そこで丸一日かけて、看護師や介護職員がユマニチュードを実践する姿を見学し、その効果を目の当たりにしました。

「この技術は誰にでも習得でき、ケアの現場が抱えるさまざまな困難を解決できる」
そう確信したアニー氏。

さらに、その頃アニー氏の母親もユマニチュードの存在を知り、「この技術があれば、これまで関わってきた多くの利用者との関係づくりがもっと円滑になっただろう」と語っていたといいます。
自身が現場で得た確信と、長年介護施設で働いてきた母親の言葉が後押しとなり、アニー氏はユマニチュードの普及活動に力を注ぐようになりました。

シンプルな技法に宿る奥深さ

ユマニチュードの技法は一見とてもシンプルです。しかし、それを完全に身につけることは容易ではありません。長年現場で積み重ねてきた経験や自負があるからこそ、「これまでのケアを見直し、新しいアプローチを受け入れる」という意識の転換に時間がかかります。

また、多くの介護職や医療職は、学校教育や初期研修の段階でユマニチュードの考え方を学んでいません。場合によっては、認知症などにより混乱している人に対して不安を招きかねないケア技術を教わってきたこともあるため、日頃の身体の使い方やコミュニケーションの習慣を見直すには、一定のプロセスが必要です。

IGMフランスでは4日間の基礎研修を実施していますが、その後も数週間にわたり実践を重ねることで、初めて技術が自然な行動として身についていくといいます。特に「見る」「話す」「触れる」といった基本技術は、繰り返しの実践によって磨かれていきます。また、技術の定着のためには管理職による組織的なサポートも欠かせません。

その一方で、実際に利用者の反応の変化やケアの質の向上を実感することが、現場職員にとって学びを続けるモチベーションとなっています。

(左)アニー氏、(右)IGMインターナショナルのディレクター・フランク氏

認証取得までの継続的なプロセス

実際の導入における最大の課題は、「ユマニチュードを導入すれば現場が変わる」という可能性を信じてもらうことです。医療や介護の現場は、人手不足や時間不足、財政的な課題に加え、コロナ禍による影響や近年のエネルギーコストの上昇など、多くの困難に直面しています。こうした状況下で、新たな取り組みへの挑戦を決断することは容易ではありません。
だからこそ、認証取得に向けた伴走支援が不可欠です。

IGMフランスでは、導入プロセスの各段階に応じた詳細なロードマップを整備し、ステップごとに着実に進められる仕組みを構築しています。施設が「これなら取り組める」と感じられるよう支援することを重視しています。

ユマニチュードの導入に取り組む施設とアンバサダー、IGMが連携しながら学び合う姿は、まさにフランス全土に広がる「絆のネットワーク」と言えるでしょう。

「福岡市モデル」から描くフランスの展望

「私たちの夢は、ユマニチュードを学校で教えることです。子どもの頃から学べば、それが自然な習慣になるからです。」アニー氏はそう語ります。

福岡市が小中学校でユマニチュード講座を実施していることについても高く評価し、その取り組みは世界的にも先進的であり、大きなインスピレーションを得ていると話してくれました。

今後は、福岡市をはじめとするさまざまな取り組みをフランスからも積極的に発信し、国境を越えた「ケアの哲学」の共有を一層深めていきたいと語りました。

 

【編集後記】

今回のインタビューは、第一弾にご登場いただいたIGMインターナショナルのディレクター、フランク・ドゥ・ヴィヴィー氏のご厚意により実現しました。

実はアニー氏とフランク氏はご夫婦であり、今回のオンライン取材にもフランク氏が同席してくださいました。お二人が長年にわたり力を合わせてユマニチュードの普及活動に取り組まれている姿から、その理念が多くの人々へ着実に広がっていることを実感するインタビューとなりました。

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